わたしは派遣社員として企業で翻訳や通訳業務を担当しながら、英語をやり直したいという社員さん(20代から50代)に英語を教えていた経験があります。
正確に言うと、英語教室のように講義していたわけではなく今はやりの(?)英語コーチのような役割でした。
「とにかく学生時代は英語が嫌いで全然勉強しなかった。中学英語すらもう忘れている」
と主張する人たちに中学英語の文法から復習してもらいました。
ぶっちゃけ、大変でした…
なんで大変だったかというと、私自身がさほど英語が大好きなわけではなく学生時代に英語の成績が良かったわけでもないからです。
アメリカの大学を卒業し、派遣先では「英語のすごい出来るひと」扱いされていますがいまでも英語に対しての苦手意識というのはあるんですよね。
わたしの強みは中学高校時代は英語が苦手で嫌いだったという経験を生かして、英語嫌いの視点からアドバイスができるということです。
英語は好きになれないけど、勉強をやり直して英会話やメールを英語で書くレベルまでもっていきたいなと考えている人の参考になれば幸いです。
英文法からは絶対に逃げられないけど、なるべく苦痛をなくそう
やり直し英語でまずやるべきことは英文法です。できれば発音もこの段階でやった方がベターですが、社会人であれば時間が限られていると思いますのでここでは英文法の勉強のしかたを説明します。
ここで、中学英語を○時間で復習できる!といったタイトルの本は使わない方がいいです。
中学3年間の英語の授業時間数は標準で350時間ぐらい。そのうち英文法には150時間以上はさかれているはずです。10時間以下で復習するのは少し無理があります。
もし、教養として英語の文法をザックリわかっておきたいという目的であれば1冊さーっと通勤時でも読めるこの手の本でもいいでしょう。
ただやり直し英語を本気でやるには向いていません。
というわけで中学英文法の復習にオススメする本は「スーパーステップくもんの中学英文法」です。
わたしが実際に社員さんに勧めて使ってもらっていた本です。
参考書と問題集が合体したような教材で全176ステップ、1ステップに2つの例文とその文法解説があります。そして別冊でチェックテストもついています。
ステップ1から順番にこなしていく際のコツがあります。
①2つの例文を読んで自分でサッと日本語訳できるかどうかを確認する。できない場合はその下に続く解説とポイント1,2をじっくり読む
②解説とポイントを読み終えてから、もう一度例文にもどってどうして書かれている日本語訳になるかを理解する
③最初に日本語訳に自分でできなかった例文にチェックを入れておく。余力があるならその例文をカード化する(英文を左、日本語訳を右に書くなど)
※別冊のチェックテストは全ての例文をスラスラ日本語訳にできるようになった段階でチャレンジするといいです。
この教材の例文は全部で352文になります。上記の手順で1日に4ステップ8例文ぐらいのペースで進めると6-8週間ぐらいで1周できます。
文法解説はシンプルでわかりやすく書かれていますが、それでも英語アレルギーのひとにとって煩わしく思える文法用語が頻出します。
「補語が~」「前置詞+名詞の形の句は~」「名詞を節で修飾する~」
こういった説明に「はあぁーっ」とため息をつきながら「読んでて絶望的にいらいらする。全部理解しておぼえられると思わない」と訴えてきた若い男性社員にわたしは下記のように提案しました。
重要なのは例文をちゃんと日本語訳できるかどうかなので、多少「よくわからない」「なんだこの説明は」と思う文法解説があっても気にしない。ただし、飛ばさずに一通りは読むこと。
正直わたしは上記のような文法用語を使っての文法解説はできませんが、例文は全て日本語訳にできますし、逆に日本語訳から英語にすることもできます。
「じゃぁ俺も解説はもう読まなくていいスか!例文だけ暗記していいスか!」
といきおいよく懇願されましたが、とにかく文法解説も読んでいくように説得しました。
わたしも学生時代に文法用語にイライラして授業をちゃんと聞いてなかったので気持ちはすごくわかるんです。
学校の授業でやったSVOC, SVOO, などの文型や仮定法や関係代名詞…どれも完全に理解できたものはありませんでした。イヤイヤ定期テスト前に無理やり詰め込んで平均点すれすれを取っていたぐらいです。
それでも文法の解説は一度でもいいので理解しようと努力したほうがいいです。その時にスッキリと理解できなくても英語の勉強を継続していれば、あとになって「ああ、そういうことだったのか」とわかる日が必ずきますから。
ひとまず枝葉の細かいルールや用語を完全に把握できなくてもコンセプトを自分の中に取り込もうとすることが大事なんです。
繰り返しになりますが
「スーパーステップくもんの中学英文法」で復習する場合の最終ゴールは例文を英語→日本語、日本語→英語に変換できるようになることです。
文法やポイント解説についてはなるべく理解しながら読んでいくこと。は?と思ったところもゴリゴリ読みすすめましょう。そして例文を日本語訳にするところに9割ぐらいの力をいれてやりましょう。
「ココの説明わからん、もういいわ!」と投げ出さないように解説部分の理解はオプションぐらいの気持ちでいいです。
「なんでこの例文の日本語訳はこうなる?解説わからん」という場合でもいったんは
「まぁよくわからないけどこう訳すんだな」という感じで先に進みましょう。
どうしても疑問は解消したい、でも近くに質問できる人がいない場合はオンライン英会話を受講するという選択肢もアリだと思います。
最近はDMM英会話やネイティブキャンプなど月額6000円から7000円という低価格で毎日レッスンを受講できます。
しかも日本人講師も在籍しているようです。
文法の疑問を解消したいなら日本人講師を指定して受講し、質問するといいですよ。
英語の発音は週末などに集中的に一通りやった後、毎日5分から10分の練習を続ける
英語の発音については別記事で詳しく解説しましたのでそちらを参照してください。
中学英語の復習から取り組むひとは、ひとまずステップ1だけでいいと思います。
英文法と発音の後は、英単語の暗記ではなくリーディングに取り組もう
文法の復習で例文を日本語に訳せるようにしつつ、不明単語を覚えていくと自然に1000語ぐらいの語彙は獲得できているはずです。
英単語の暗記はある程度の土台がないとできません。ガンガン覚えていこうとしても頭に入ってこないんですね。それなりに英語の基礎力があってはじめて単語をうまく暗記できるようになっていきます。
この段階では単語集などに取り組むよりリーディングで多くの文や表現に触れていきましょう。英文をどんどん読んでいくと英文法で理解しにくかったところがわかるようになる事もあって、楽しいですよ。
ところでリーディングでオススメの市販教材というのが実はありません。
ぶっちゃけ初心者の学習者向けや中学生向け英文リーディング教材ってどれも退屈なんです。面白くもない内容を外国語で読まないといけないなんてタダの苦行ではないですか。
とはいえ、中学の英文法の復習を終えた段階で英語のペーパーバッグや英字新聞を読むのも難易度が高すぎます。
じゃあ何を読めというのか?
わたしがすすめているのは以下のリーディング素材です。
・好きなマンガの英語バージョン(もしあれば)
・好きな海外ドラマの英語スクリプト(シナリオ)
・好きな日本人作家の小説やノンフィクションの英訳版
・自分の趣味に関連する雑誌(ファッション、スポーツ、車など)
どれも基礎レベルの学習を終えたばかりだと、難しいと思います。それでも自分が好きな素材を使用することで、モチベーションもアップして継続しやすくなります。
わたしは留学直前の段階でも、リーディング教材をやりこなすことができませんでした。
内容があまりにも面白くなくて続かなかったからです。
留学生用のテストであるTOEFLのリーディング教材や、子供向けの童話や絵本、英語学習者向けの英字新聞など、どれも途中で嫌になって投げ出してしまいました。
ところが留学後にアメリカ文学のクラスで読まされた小説や自分の好きなスティーブン・キングの小説などはしんどいながらも読むことができたんですよ。
学校の課題だから自分をプッシュしたところもありますが、やはり大きかったのは自分が興味のあるもの、読みたいと熱望するものだったからだと思います。
もちろん、学習用のリーディング教材で楽しく勉強できる人ならそれでいいでしょう。
わたしのように「自分が日本語で読みたくないものを英語で読むなんてムリ!」という人は上記にあげた素材を試してみて下さいね。
まだレベルが低くて歯が立たないと思うかもしれませんが、極端な話ながめているだけでもいいんです。
例えばファッション誌のVOGUE英語版をパラパラながめつつ、時どき文章(セレブインタビューとか)を一行でも読んで見る、とかでもいいんです。
参考までにいくつか例をあげておきます。
マンガの場合は、英語版は限られているので運良く自分が好きなマンガがあればいいですね。わたしなら「のだめカンタービレ」を選びます。人気の「ワンピース」も英語版があるようです。
KADOKAWAが運営しているコミックサイト「ComicWalker」は無料でマンガが読めるのですが、サイトの右上にあるLanguageからEnglishを選んで英語で読めるものもあるのでチェックしてみてください。
好きな海外ドラマがあるなら、ぜひ「ドラマのタイトル+script」検索してみて下さい。もしscriptがヒットしたらそのシナリオを読んでいきましょう。
ドラマのシナリオの方がマンガの英語版を読むより難易度は低いと思います。ただし口語でくずれた英文や省略された英文、スラングなどが多めになりますので不明な部分がでてくるでしょう。
その場合もやはりオンライン英会話を利用して講師に質問するのが有効です。できれば日本語を片言でも話せるネイティブスピーカーの講師に解説してもらうのがベストです。
ドラマでの勉強方法については別記事で詳しく説明していますのでよろしければ読んで下さい↓
例えばもしあなたが村上春樹さんの読者なら、著書のほとんどが英訳されているのでおすすめです。彼の日本語は平易でシンプルなので、英語版も読みやすいからです。
村上春樹さんの小説の主人公の男性ってよく「やれやれ」って言うんですよね。
これ、どう英訳されているんでしょうか。興味ありませんか。
ちなみに、わたしが派遣先でやり直し英語を教えていた時はドラマのシナリオを読むことを選択する人が多かったです。
アメリカのドラマ「バンドオブブラザーズ」が死ぬほど好きという人がいて、喜んで何度もシナリオを読んでいました。
アンタ何でよりによってそんな重苦しい話を…と思わないでもなかったですが、やはり本人が好きであることがいちばんですよね。
学習者用に作成されたものではない、生の英語素材を勉強して自分のものにするのは本当に楽しいんですよ。より多くの人にこの喜びを知っていただきたいです。
中学英文法、発音の基礎、英文リーディングまで終われば次に高校英語の復習へとすすみましょう。
高校英語の復習については別記事にて解説する予定です。