働き方

海外ドラマと英語がとにかく好き、だから映像翻訳者になりたいという人が知っておくべきこと【翻訳教育産業】

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海外ドラマが大好きです。

仕事を終えて帰宅し、夕食おフロ家事その他など全て終えてからマッタリとお気に入りのシリーズをみるのが楽しみで楽しみで。

毎日いろいろと気疲れすることがあっても、寝る前の「ドラマ鑑賞」の時間で解消するようにしています。

そんな私ですから、映像翻訳という仕事にはもちろん興味があります。

じつはAI翻訳などのツールが台頭してきている翻訳業界の未来についての記事を以前に書きました。

今後、翻訳という仕事は報酬レートが下がり続ける。機械が翻訳した後の退屈な修正を人間の翻訳者が安い料金でさせられる、という暗い話でした。

ところが、翻訳の中でも映像翻訳というジャンルは特殊なんですよ。ドラマや映画のセリフは、機械翻訳で作業するのが最も困難なものですから。

人間が実際に話している言葉って、不完全で、言い直しや省略、付け足しが多い、崩れた文がほとんど。機械(AI)が理解するには、まだまだ謎が多すぎるんです。

そのうえ字幕翻訳の場合は、字数制限があります。限られた時間と字数で、ペラペラと話されているセリフをうまく母国語で表現しないといけません。

ただ翻訳するのではなく、セリフの内容をいったん自分の中で消化してから視聴者が理解しやすいように、母国語で短くシンプルに組み立て直してるわけです。

どんなに優れた人工知能(AI)、翻訳データを突っ込んだソフトであっても、簡単には出来るようにならないでしょう。

それでは映像翻訳者になるための勉強でもしてみようか!と決意する前に知っておいてほしいことを本記事では紹介していこうと思います。

映像翻訳者になるまでの費用や期間について

ここ数年、映像翻訳スクールが通信教育やオンラインも含め増えてきています。

どのスクールも力いっぱい主張しているのが

Huluやネットフリックスのような動画配信サービスが普及してきたため、ドラマの字幕翻訳や吹き替え翻訳のニーズも増えてきている。

翻訳されるのを待っているドラマはいっぱいあるのに、映像翻訳者が足りない。だから、早急にスクールで人材を育てる必要があるのだ!

ということです。なかなか説得力のある理屈ですね。

調べてみるとザックリですが

映像翻訳スクール、オンライン通信講座の学費→ 30万から60万ぐらい

字幕翻訳ソフト購入→ 10万から20万ぐらい

学習期間→ 1-3年

を投入しないといけません。まぁまぁお金も時間もかかります

これだけの金額と時間を費やさないといけないとなると

本当に字幕翻訳者って足りてないの?

スクールや通信教育を受講しないと、映像翻訳の仕事はできないの?

スクールを卒業したら、ちゃんと映像翻訳の仕事で生計を立てていけるの?

なんていう疑問がでてきますよね。

こういった疑問についても、わたしなりに調べてみました。

本当に字幕翻訳者って足りてないの?→クオリティーの高い翻訳を迅速にできて、かつ安い報酬で請け負ってくれる翻訳者は足りていない

スクールや通信講座を受講しないと、映像翻訳の仕事はできないの?→映画配給や動画配信サービス関連の会社で正社員として働いているとか特別なコネがない限り、スクールに行かず仕事をするのは無理でしょう。それに字幕翻訳については字幕制作ソフトのSSTなどを使いこなすことが求められるのですが、独学では難しそうです。

スクールを卒業したら、ちゃんと映像翻訳の仕事で生計を立てていけるの?→基本的によほどの売れっ子で、大ヒット作品のみ翻訳する機会にめぐまれていないと、高額収入は望めなさそう。卒業したら必ず映像翻訳の仕事につける保証もありません。頑張ってトライアルに受かり、仕事をできたとしても最初はかなり安い報酬で、タイトなスケジュールだったりする可能性大です。安い報酬からレートが上がっていくかどうかは、ぶっちゃけ未知数ですね。

他のジャンルと比較して、映像翻訳はまだ将来性がありそうな雰囲気を漂わせてるんですが、実際に見えてきたのはネガティブな要素でした…

それでも映像翻訳者になりたい!という人は、夢をかなえるために頑張ってみましょう、とサクッと終わりにしてもいいかもしれませんが、もうひとつ映像翻訳者志望のみなさんに伝えたいことがあります。

そう、ここから本題です。前置きが長くなりすみません(^_^;)

翻訳マーケットにとって重要な翻訳教育産業

翻訳教育産業」というのは翻訳スクール、通信講座、オンライン講座、翻訳に必要なソフトウェアやツールなどの供給をする産業です。

翻訳市場というのはもともと小さかったんですよ。それが翻訳エージェントが翻訳教育に乗り出してから「翻訳教育産業」のほうが純粋な翻訳マーケットより大きく育ってきたという歴史があります。

詳細は「翻訳とは何か 職業としての翻訳山岡洋一 著の第5章に詳しく書かれていますので興味のある方はよんでみてくださいね。

ザックリと要約すると、プロの翻訳者と比較して「翻訳者予備軍」がきわめて多く、その「翻訳者予備軍」が通信講座や翻訳スクールにお金を落としてくれるため「翻訳教育産業」が順調に拡大してきた、ということ。

まぁ、通訳翻訳ジャーナルとか翻訳事典のような雑誌をみてみると分かりやすいのですが、半分くらいのページがスクールと通信講座の宣伝です(~_~;)

山岡氏の「翻訳とは何か」は約20年前に出版されているため、現在の状況とは少し違っているところもあります。また著者は出版翻訳者であり、おもに出版翻訳を志望する人に向けて書いています。

とはいえ今翻訳という職業を目指している人でも、耳を傾ける価値のある内容です。

すこし厳しい言い方をしている部分を取り上げますね。

翻訳とは何か 職業としての翻訳山岡洋一著  

 P217-219  引用

翻訳にあこがれて学習をはじめる人たちは、翻訳教育産業にとってありがたいお客さんだ。まじめで熱心なので、一歩一歩階段を上がるように学習してくださいと指導すれば、簡単にはあきらめない。…翻訳教育産業は、翻訳に対して最終責任を負いたくないが、翻訳というあこがれの仕事にかかわっていたいと考える人たちを大量に生み出している。…そもそも翻訳には向かない人たちにまで市場を広げていかなければ経営が成り立たないほど、翻訳教育産業は肥大化している。

わたしも山岡氏のいう「ありがたいお客さん」で、スクールこそ通ったことありませんが出版翻訳の通信講座に申し込んだことがあります。

結局、課題を全く提出することなく学費だけ払って終わりました(・_・;)💧

通信講座をムダに受講、というかお金だけつぎ込んだ後、派遣で翻訳業務をするようになりました。技術文書やビジネスメール、プレゼン資料などを扱う産業翻訳です。

企業に派遣されて社内翻訳をしているうちにわかったことがあります。

産業翻訳については、現場で業務関連の知識を身に着けたうえで、資料の翻訳をするのが定番ということ。つまりスクールや通信講座は必須ではないのですね。

出版翻訳の場合はスクールで頭角をあらわして、現役翻訳者に認められる必要があったりしますが…

翻訳スクールと通信講座、人気の移り変わり

出版翻訳(バベル、フェロー・アカデミー、DHCなど) 1990年代をピークに、2000年ぐらいまで人気があった。

IT翻訳 特許翻訳  医薬翻訳 金融翻訳  2000年ぐらいから盛り上がり、2010年ぐらいがピークだった。

映像翻訳 2015年くらいから目立って増えてきている。

ここ20年ぐらい、翻訳という仕事に専念しようかどうしようかと思い悩んできたので、翻訳スクール、通信講座について詳しくなってしまいました。

2005年前後ぐらいは、産業翻訳スクールは通信講座もよりどりみどり、全国を網羅するぐらいのいきおいでありましたね。

特に医薬翻訳と特許翻訳はものすごい人気がありました。おそらく在宅でお金を稼げるイメージがあったからですね。

スクールも宣伝で

「現役医師が医学知識を指導!」

「文系のあなたでも大丈夫です!」

「英語力は英検3級程度でいいんです」

と誰でもこい、という状態でしたよ。

現在でも老舗のフェロー・アカデミーやサンフレア・アカデミー、DHCなどは通学、通信ともに講座を提供しています。

ところが、それ以外にたくさんあったスクールは少しずつ消えたり縮小されたりで、医薬や特許翻訳関連の通信講座はかなり減りました。

DHCも、わたしがお金を払っただけになった出版翻訳講座はもうないです。ここは医薬翻訳講座もたくさんコースがあったはずなのに、今は1つしかありません。現在はeラーニングに移行している最中みたいですから、一時的に少なくなっているのかもしれないですが。

やはり採算が取れないから辞める、という流れではないでしょうか?

つまり出版や産業翻訳のスクールに、生徒が集まりにくい状況なんだろうと思います。

動画編集やWebデザイン、プログラミングといったキラキラした仕事に最近はスポットがあたるようになってきたことが、要因としてあるかもしれません。

これで翻訳教育産業も衰退していくのか…という空気のなか、ここ数年で一気に元気になってきたのが映像翻訳スクールです

映像翻訳スクールの盛り上がりがハンパない【2020年】

わたしが「映像翻訳って面白そうだなぁ」とボンヤリと考えていた2000年~2005年ぐらいだと、首都圏に住んでいない人は映像翻訳をあきらめるしかないという時代でした。

スクールも「はぁ?地方に住んでるの?じゃあ映像翻訳なんてムリだね!」といわんばかりのツラ構えでした(←被害妄想?)

ところが、今や映像翻訳スクールのほとんどが通信やWeb講座を開講していて、「地方の人も、めっちゃウェルカム!」状態。

「ネットが繋がってるとこなら、全国津々浦々どこに住んでいてもいいんだよー。海外に住んでる人も受講してね💖映像翻訳のノマドワーカーをめざそうよ(≧∇≦)b」

などと、海外ドラマ好きの映像翻訳志望者に、甘い言葉を投げかけてきます。

映像翻訳が学べるスクールについて、現時点でネット検索で確認できたのは以下のとおり↓

日本映像翻訳アカデミー  通学、Web講座

ワイズ・インフィニティ  通学、通信講座

映像テクノアカデミア 通学、Web講座

キネマ翻訳倶楽部  通学、Web講座

フォアクロス  通学

フェロー・アカデミー 通学、通信講座

どのスクールを選んでも、通学、通信ともに基礎からはじめて、字幕翻訳ソフトの使い方などもマスターできるまで受講するなら数十万円はかかります。

そして、基礎レベルを終了するとSSTなどの字幕翻訳ソフトを購入しないといけなくなるのも同じ。これが10数万円ぐらい。

学校を運営する、字幕翻訳ソフトを販売する側にたってみると今がビジネスチャンスですね。

10年後、20年後にはどうなっているかわかりませんが、とりあえず今のうちに映像翻訳志望者から受講料と字幕翻訳ソフト代金をがっぽり頂いておきたいところでしょう。

…とここまで読んできてくれた人は、なんだかものすごぉぉーく嫌味な考え方だな!と思われたかもしれません。

わたしとしては映像翻訳スクールの営業妨害をしたいわけではなく、今なぜ映像翻訳スクールが盛り上がっているのかということを認識したうえで、受講するかどうか決めてほしいんです。

はじめは翻訳教育産業の「ありがたいお客さん」であったとしても、そこにとどまらずにプロとして生計を立てていくまでの覚悟があるかどうか。

実際にスクールを受講してプロになった人もたくさんいると思います。

あと報酬が安くても我慢できるかも重要です。

もちろん高収入を目指して、調べ物も翻訳も字幕ソフトの操作もササッとできるように頑張れるかもしれません。でも一般的なサラリーマンなみの収入に到達するまでどのぐらいかかるか未知数じゃないですか。

映像翻訳スクールって「今、映像翻訳がアツい!優秀な翻訳者が足りない!」ということを大声で言いますが、報酬について全く触れていなかったりすることが多いですよね。

わたしが正直だなぁと思ったのは「キネマ翻訳倶楽部」ホームページです。映像翻訳の収入モデルを提示しています↓

https://kinematc.jp/specialty/

字幕翻訳10分あたり8000円から12000円以上となってますね。

新人だと8000円と思っておいたほうがいいですね。そして、10分の字幕翻訳にかかる時間ですが、だいたい7-8時間のようです。時給1000円くらいでしょうか。

詳しいことは、現役の映像翻訳者のブログに割とセキララに書かれているので読んでみてくださいね。↓

https://www.mifumis.work/entry/workingspeed

フリーランス主婦の孤独LIFE

翻訳者の報酬はとにかく安く、という日本のビジネス社会

映像や出版などのメディア翻訳に限ったことではありません。産業翻訳でも一部の特殊な分野(バイオの特許文書とか)を除いて報酬レートは下がり続けています。

これは、翻訳に対して報酬を支払うクライアント企業が

「翻訳に高い料金なんて払えるか」

「翻訳なんて誰でもできる、翻訳ソフトでも使って手直ししたら簡単だろ」

「翻訳料は切り詰めて、他のところにお金を使いたい」

という感じで、翻訳をかる~くみていることが原因じゃないかと思っています。

今に始まったことではなく、昔から通訳とか翻訳って企業によっては見下されてしまう業務なんですよね。同時通訳者がエッセイで「ちょっと通訳さん、〇〇買ってきてよ」とお使いに行かされたり「キミ、本当にちゃんと私の言ってることわかってるの?」と派遣された会社の役員などにバカにした口調で言われてくやしかった、なんていうエピソードを披露していたり。

翻訳者も一般企業では「ただの英語字引」と思ってる人も多い。いきなり同じフロアで働いている、特に面識のない人が席に来て

「〇〇って英語でどう言うの?」と聞かれ

「え…(文脈も背景もなくそんなこと言われても(゚∀゚)」と戸惑ってると

「翻訳さんなのに、こんなのも知らないの?」と罵倒されたり。

まぁグチグチ言っても、この傾向はそんなに変わらないと思います。

ぶっちゃけ翻訳通訳だけでなく、全然ジャンルは違いますがアニメーターとか看護師とか世界的な基準からすると、日本では異様に給料が安いようです。

日本人の国民性もあるんでしょうね。海外では労働者がストライキとかするの普通ですから。日本で、翻訳者の労働組合とかちゃんと組織を作って賃金を下げすぎないように戦うなんてあまり考えにくいですよね…

とはいえ映像翻訳ってまだ「やりがい」や「楽しさ」の面で産業翻訳よりはマシかもしれません。それに「ドラマや映画の字幕翻訳やってます」とか自己紹介したら「わぁーすご~い!」というリアクションも返ってきそうです(笑)←こういうのも大事ですよね

個人的には安い報酬でもガマンできる人なら、映像翻訳にチャレンジしてみたらいいと思います。

翻訳教育産業の翻訳市場における役割を知ったうえでチャレンジしてくださいね。

運が良く、実力も突き抜けているなら大ヒット映画の翻訳をする機会があったりして高収入への道が開けるかもしれません。

Good Luckヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。

 

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