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通訳はAIに仕事を奪われるのか【未来予測】

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翻訳業界の現状と未来について、以前あまり愉快とはいえない内容の記事を書きました。

 

AIを駆使した翻訳ツールの開発が進んでいるため、AI翻訳(機械翻訳)したあとに人間の翻訳者が修正するという流れが加速しているという話です。

それでは通訳はどうなのか。

通訳も翻訳と同じように多くの企業が競ってAI通訳のツール開発に乗り出してはいるようです。現在すでに発売されているもので有名なのはポケトークですね。

結論から先にいうと、翻訳とは違って通訳という職業はまだまだ安泰だといえます。

もちろんサービス業(デパートの販売員、ホテルの従業員、ツアーガイドなど)で必要とされる日常的な英会話に限って言えば、ポケトークのような音声翻訳機で事たりるかもしれません。

しかしながらビジネス会議(商談や交渉など)、国際会議、科学技術セミナーなどで必要とされる通訳は機械にはとうてい無理でしょうね。

現在の音声翻訳機のレベルから考えると、あと少なくとも100年ぐらいは人間の通訳を超えることはなさそうです。

音声翻訳機とAI通訳サービス

翻訳の場合はテキストになっている文章を機械が認識すればいいのですが、通訳になると音声を機械が認識できなければ話になりません。

音声認識能力はだんだん進化してきてはいるようですが、「普通にビジネスや会議で話されること」をどれだけ認識できるのかという問題があります。

たとえばアマゾンの「アレクサ」Googleの「Googleアシスタント」といったスマートスピーカーも最近は人気がありますよね。

このスマートスピーカーはAIアシスタントを搭載していて音声認識をしてくれます。ところが、

「アレクサ、〇〇とって」

「オーケーGoogle、〇〇したいんだけど」

といった単純明快な指示をしなければ認識してもらえません。

ポケトークのような音声翻訳機は、スマートスピーカーより音声を認識する能力はあるようです。それでも話し手が意識して「機械に理解してもらえるように」話さないといけないことに変わりありません。

これは現在ビジネスで通訳が必要とされるシーンで活用するのはむずかしいんじゃないでしょうか。

会議でのトークなんて、主語があいまいだったり、話がいったりきたりする、横から誰かに遮られる、何回も言い直す…の連続ですよ。

音声翻訳機には手に負えないと思いますね。

ポケトークですが、長文も聞き取ってすばやく翻訳できることを公式ホームページの動画で紹介されていますので参考までにどうぞ↓

https://pocketalk.jp/details/translation-list/

ポケトークの翻訳例 「ニュースのような長文も翻訳」より

日本文:年末年始に海外旅行をする人が73万4,000人になる見通しです。成田空港では、年末年始の海外旅行者の出国のピークは12月29日で、入国のピークは1月3日になる予想です。

英訳:It is expected that 734,000 people will travel abroad at the end of the year at Narita Airport. The peak of the departure of New Year's holiday from the end of the year is December 29th, and the peak of entry is expected to be January 3rd.

論理的で、理路整然とした文章が翻訳されています。「ニュースのような長文」とありますが、まさに新聞記事でみられる文ですね

繰り返しになりますが、通訳が求められているビジネス現場でこういう「整った」文章をよどみなく読み上げられることはまれです。

新製品のプレゼンテーションとか、演説をおこなうとか、セミナーでレクチャーをするような場面であれば原稿を読みすすめることが多いので「ニュースのような長文」もありえますが。

シンプルに翻訳機能としては優れていると思います。最近は英語の勉強に使っている人も多いようなので、通訳機能にはあまり期待できなくても色々と活用はできそうですね。

では例えば↓のYoutubeのようなビジネスディスカッションはどうでしょうか。

長いので最初の数分でもいいのでチラ見してみてください。

ヤフー・小澤氏×オークファン・武永氏×楽天・中島氏 Eコマース革命が拓く未来(G1ベンチャー2014)

https://www.youtube.com/watch?time_continue=347&v=rZ6bgUMHy7A&feature=emb_logo

ある程度聴衆を意識した話し方をしていると思いますが、こういった内容を音声翻訳機はうまく認識できないはずです。

そして、現在通訳が必要とされている現場ではもっとわかりにくい話し方の人ばかりが活発に議論していたりすることが多いんですよ。

ビジネスや国際会議などでの会話は、接客業(レストラン、ホテル、ツアーガイド、デパート)での会話と全く性質が異なります。

おそらく「通訳も近い将来AIに仕事を奪われる」と予測している人たちは通訳の現場を知らないのではないでしょうか。

いっぽうでAI通訳サービスはまだそんなに多くありませんが、ポケトークのような音声翻訳プラス人間の通訳でバックアップするという「開発途上」の感が否めません。

https://www.inboundtech.co.jp/business/multilingual_video-interpretation.html株式会社インバウンドテック AI通訳より

クラウド上で学習を続ける人工知能による相互リアルタイム会話翻訳に音声対応。AIでカバーできない翻訳については当社オペレーターの有人通訳でバックアップするハイブリッド型通訳サービスです。より効率的かつ即座にサービスを提供する事を可能としたAIと人による365日24時間対応の通訳サービスです。

AIによる通訳で解決しなかった場合は、そのままの画面遷移の流れで多言語オペレーターへの接続が可能。まだ人工知能では対応ができない専門性の高い会話や難解な会話に関しては多言語オペレーターへ円滑にエスカレーション。

翻訳については機械翻訳にかけたものを人間の翻訳者が修正するという「ポストエディット」なるものが定着しつつあるのですが…

通訳で同じことをしてたら通訳の意味あるんですかね?音声通訳→うまくできなかった→人間の通訳がサポート、みたいな。

通訳ってリアルタイムで内容理解できるから価値があるんで、機械にかけて修正にモタモタしてたらよけいな時間と労力がかかるだけでしょう。

同時通訳は神業

仮にどんな話し方でも、論理的に破綻した文であっても、認識できる機械が将来できたところで「同時通訳」は難しいはず。

絶対に一定のタイムラグができますし、人間の同時通訳者が「先読み」しながら脳をフル回転して通訳していくような技がAIに可能なのか、疑問です。

同時通訳はバイリンガルの人が通訳訓練を長年受けてもできるとは限らない、才能が必要なスキルなんですよ。

AI(人工知能)に「先読みする」「主語が何かを推測する」「完結していない、中途半端な文をうまく訳す」ということを学習させるのは大変なことだし、人間の脳と同じような働きをさせるなんてまだ夢の夢ではないでしょうか。

結論:同時通訳や高度なビジネス通訳の仕事はAIにはできない。日常会話や、論理的に書き起こされた「ニュースのような」長文なら音声翻訳機でなんとか対応が可能なレベルです。

これから通訳を目指したい人へ

高度な通訳スキルについては今後も需要があると思います。今年に入ってコロナ自粛の問題があり、オンライン会議もかなりの企業で利用されるようになってきました。

そこで、通訳もオンラインで活用されるシーンが増えてきているようです。

会議通訳のオンライン講座を運営しているEJ EXPERTが「リモート通訳講座」をこの7月に開講しています。

https://www.ejexpert.com/blank

EJ EXPERT公式サイト

これまで会議通訳の仕事は首都圏に集中していて、地方に住んでいる人にとっては不利でした。「リモート通訳」が広がっていけば、どこに住んでいても通訳の仕事が出来るようになるかもしれません。

ただし、「日常会話」や「旅行会話」といったレベルでの通訳に関しては今後ポケトークのような音声翻訳機が積極的に使われるようになっていくことでしょう。

通訳を目指すなら、あくまで機械に出来ないレベルの高度な通訳スキルを獲得することが重要ですよ。

おまけ:ポケトークのある職場での体験

わたしはインバウンド関連のアルバイトをしていたのですが、職場にポケトークがありました!

英語を全く話せないスタッフが外国人と対応しなければいけない場合に使うようになっていたんです。

最初は「こんな便利なものがあるのか…」と感動していたんですよね。

「日本人も英語ができるようにならなければ!なんてもう言わなくていいんじゃないの」とまでは思いませんでしたが(笑)

ところが、英語を話せないスタッフから毎日のように呼ばれて外国人の対応を丸投げされることが多かったんです。

わたしは接客ではなく別の業務を担当しているのに、「Masamiさーん、ちょっとー!お願いしまーす」と呼ばれていくと、外国人がニコニコして「よかった、あなたは英語が通じるのね」という表情で待っているという状況です。

「なんでポケトーク使わないのー」と後で聞くと、相手の言っていることをポケトークが正確に把握できていなくて、違う翻訳結果が出る→それに答えようとして全く話がかみあわない、というパターンがほとんどでした。

「〇〇へ行くにはどうすればいいですか」

✕✕を申し込みたいのですが」

といった超シンプルな質疑応答では使えていたようですが、少しでも話しがイレギュラーになるとうまくコミュニケーションが取れず、スタッフがパニック状態に陥ってしまうんですね。

英語を話す外国人もネイティブとは限らないですし、ネイティブでもイギリスやスコットランド、オーストラリアと発音も違います。話し方も人それぞれ個性があるため、機械が??となって思考停止になっても責められません!

こういった体験をしているので「通訳はまだまだ安泰だ」という確信をますます強めることになった、というお話でした。😊

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