ほんとうに英語学習者は大変です。
「言語学者により新たに開発」「画期的なアプローチ」「ネィティブが教える」「イメージで理解する」「絵で解説する」「聞くだけ」「漫画でまなぶ」「映画でまなぶ」
などなど、楽しんで勉強できそうなタイトルがズラッと並んでいると、どれを選べばいいか迷いますよね。
学習法にしてもネット上で色んな人が色んな方法をすすめているし、通信講座やスクールも日本中にあふれています。これだけ情報があると逆にどうしたらいいかわからなくて途方に暮れてしまうのも無理はありません。
私自身いろいろある教材や学習法に振り回されて時間をかなり無駄にしてきました。
中学高校時代に「ザ・昭和の英語教育」にどっぷりつかって辛い思いをした反動で、どうしても「らくらく!ヒップホップで英文法マスター(仮題)」みたいな楽しくやれそうな教材を試してみては後悔するの繰り返しでした。
本記事はわたしの失敗経験をもとに、多くの情報の中でさまよっている英語学習者が回り道することなく、少しでも有益な英語学習ができることを願って書いていきます。
たくさんの教材の中から、これがベストというものを選ぶことは難しい。でも明らかに避けたほうがいいものがある。
まず教材については人によって相性があります。イラストや図が多用されていてストーリー形式のものがいいとか、硬派なドリル形式が好きなど。
評判がいいからといって、自分に合わないものを選ぶと勉強が苦痛になります。
苦痛なものは続かないので、無理に「定番」「売れている」問題集や参考書にする必要はありません。ただし初級から中級までのレベルの人が避けるべき教材が2つあります。
1.洋書の問題集や参考書 (有名なものでGrammar in Useがあります)
2. これだけでいい、聞くだけでいい、など〇〇するだけというタイトルのついているもの
1.についてですが中学、高校レベルの英文法が怪しい人は洋書で勉強するのだけはやめておきましょう。
よく英語での説明のほうが英文法がスッキリわかるとか、英語を読む勉強になるからいいとかいわれてますが日本語でオーソドックスに英文法の基礎を固めてからでないと意味がありません。
Grammar in Useはたしかに優れた問題集ですし、日本語の問題集よりわかりやすくネイティブの視点から説明されている部分もあります。
それでも勉強する最初の教材としては適切ではないです。とにかく大事なのは、はじめの基礎固めですが、それには日本語で解説されたものを使用しましょう。
日本語で基礎をひととおり学習したあとに時間の余裕があるなら、洋書で英文法の勉強をするのもいいかもしれません。
でも時間がないならわざわざする必要はないですよ。
2.については「〇〇するだけでいい」、というタイトルの教材はとっつきやすいですが、内容がどうしても薄く範囲も狭いため別の教材があとになって必要になってきます。
結果として、何冊も教材をこなさなければ一通りの基礎をつかめないということになりかねず、効率がいいとはいえません。
学習法については「革新的」「革命的」「最新科学が証明した驚きの…」といったキャッチフレーズがついているものは避けたほうが無難です。
こういった目新しい学習法は「イメージ」や「ネイティブ感覚」を使っての勉強をオススメしつつ古くからある単語帳を暗記する、文法の問題集を解く、といった方法を全否定していることが多いからです。
なぜ、こういった学習法がよくないと断定するのか、自分の英語学習の経験を少し長くなりますが説明しますね。
わたしの英語学習の歴史
わたしが英語を勉強し始めたのは、中学に入学した12歳のときです。およそ30年前になりますが、当時の英語教育というのは今とは全く違い、リスニングやスピーキングはほぼカリキュラムに組み込まれていませんでした。
英語の先生もベタな日本人英語の発音で、ネイティブスピーカーの話す英語を聞く機会もほとんどなかったです。
英語を使用して外国の人とコミュニケーションを取りたい、という思いはありましたが積極的に英会話学校に行こうとかNHKのラジオ英会話を聞こうという気もありませんでした。
正直、英語という科目が得意でも好きでもなかったのでテストでは平均点前後の点数しか取れませんでした。
繰り返しになりますが、当時のカリキュラムは愚直に文法、構文、単語暗記、英文解釈をひたすらやらされるという ”ザ・昭和の英語教育”だったんです。
話が長くなるのでここでは省略しますが、わけあって日本の大学は受験せずアメリカの大学に留学することを高3で決意しました。
両親も担任の教師もわたしの英語の成績から、何を夢みたいなことをと反対されましたが自分の意志は変わりませんでした。
しかしながら高校卒業後にアメリカの大学留学に必要なTOEFLを受験し、入学許可がでるスコアを獲得するまでにかかった期間はたったの半年でした。
TOEFL受験セミナーに何回か出席しただけで、あとは自分で問題集を繰り返しやることにより短大入学に必要なスコア(PBT500)をアッサリ取れたのです。
初めてTOEFLの模擬試験を受験したときは、リスニングでネイティブスピーカーの話す英語に衝撃をうけパニックになったのをおぼえています。
でもその後、集中的にリスニングトレーニングをしたら意外なほど早く聞き取れるようになりました。
渡米後1年以上たってから、通っていた短大の付属語学学校に通っている日本人留学生たちと交流するようになりました。
そのときに驚いたのが、同じ高卒なのに彼女たちが半年から1年以上語学学校で勉強しても、まだTOEFLのスコアが足りない状態だったことです。
彼女たちとわたしとの違いは何か。ここに重要なポイントがあるのをわかっていただけるでしょうか。
決して「わたしが英語習得の天才だから」とか「頭がいいから(!)」とかではないですよ。
よくよく話をきいてみると彼女たちは文法軽視、英会話に重点をおく英語教育を受けていたんです。
中学や高校時代にネイティブスピーカーの授業を週に1回受けていたり、夏休みには短期留学したり、そのかたわら英会話学校にも通ったという人もいました。
いっぽうで学校での文法や構文、英文解釈といったカリキュラムの比率があまり高くなかったようです。
学校の授業は面白くないので無視して、かわりに英会話スクールで毎日放課後にネイティブのクラスをとっていたという人もいました。
彼女たちの発音はキレイでネイティブっぽかったです。英語で話すのもスムーズでわたしよりずっと流暢にきこえました。だからこそ不思議に思い
「なんで語学学校にいるの?学部の授業受けたらいいのに」
という疑問がでてきたんです。
きけばTOEFLスコアは400前後で伸び悩んでいるというので驚きました。
そして語学学校で中級以上のレベル、中上級や上級クラスに進級できない状態で1年過ぎてしまった人もいました。
わたしと彼女たちとの違い、それは「英語の基礎力、土台がしっかりしているかどうか」だけです
なぜか日本の英語教育は「文法ばかり」「実践的ではない」「教師の発音が悪い」などと常に批判にさらされています。
わたしが受けた昭和の英語教育も、全否定されてその後は「聞く、話す」に力を入れるカリキュラムがもてはやされるようになりました。
オーラルイングリッシュ(口語英語)、発音、リスニング、英会話といった項目が授業に取り入れられるようになったのに未だ日本人の英語力は他のアジア諸国の人たちと比較すると低いといわれています。
TOEICの平均点も低いですよね。
TOEICを主催している国際ビジネスコミュニケーション協会の公式サイトで2017年に行われた国別の受験者スコア平均点が公開されています。日本の平均点は517点で47カ国の中で39位でした。
https://www.iibc-global.org/iibc/press/2018/p098.html
国際ビジネスコミュニケーション協会 公式サイト
つまり、文法重視からコミュニケーション力重視へと英語教育のカリキュラムはシフトしましたが日本人の英語力が昔より良くなったとはいえない状況です。
自分の経験からいえることは、文法、単語暗記、構文、英文解釈といった一般的に嫌われている学習をひととおり終えているほうが、その後のリスニングやスピーキングの伸びは早いということです。
逆に英会話やリスニングばかりやって文法などを後回しにした場合は、一定のところで英語力がとまってしまう可能性が高いです。
結論:オーソドックスに文法や単語暗記をすることが結局近道です。
画期的なメソッドもアレコレ試したわたしが実感しているのが、最新の言語学とか脳科学とか心理学とかネィティブの感覚とか別に考えなくてもいいということ。
それなりの珍しさもあり、最初はノリノリで勉強しはじめても途中で「こんなんで本当に身についてるのかな」
と思いはじめ、結果として時間は費やしたけどそんなに意味がなかったというパターンを何度も繰り返した経験から断言できます。
これからも英語学習についてはどんどん新しいメソッドやツールがでてくるとは思いますが、原則として昔からある「普通の」勉強法を否定するようなものは疑ってかかったほうがいいと思います。
普通に勉強していたほうが良かった、とあとになって後悔しないためにも参考にしてくださいね。