IMDb
https://www.imdb.com/title/tt3012698/
アマゾンプライムビデオには、HBO制作ドラマのラインアップがあり「オリーヴ・キタリッジ」もその中のひとつです。
全て視聴してるわけではないですが、HBOの作品にハズレはほとんどないですね。コメディーでもシリアスでも恋愛ものでも、骨太で見応えがあります。
「オリーヴ・キタリッジ」はピューリッツァー賞を受賞した小説が原作なこともあり、純文学を忠実にドラマにしたような作品。
有名な賞を取った小説のストーリーなんてどうせ退屈だろう(すごい偏見💧)、と最初はみるかどうか悩んだんですよね。
アマゾンの紹介文
ニューイングランド地方の一見落ち着いた町の住人たちの物語を、優しく、愉快に、そして時に悲劇的に、中学校の数学教師の目を通して描く
というのも、いかにも面白くなさそうで(~_~;)
ところが気まぐれに1話目を再生したら、引き込まれてしまい全4話いっきにみてしまいました。
地味でシリアスなドラマではありますが、その魅力を紹介していきます。
※ネタバレありありであることをお断りしておきます。
主人公オリーヴのキャラが強烈すぎる
オリーヴ、身勝手にもほどがある! なんで自分の家族に辛くあたるの? もっと愛想よくしろ。女として見てもらいたいなら化粧ぐらいしろ。
とこのドラマをみた誰もが思うはずです。まぁ、女としてウンヌンは性差別っぽくなるので言うべきではないかもしれません💦
それにしても本当に無骨なキャラ。とにかく夫と息子にものすごく厳しい。ニコリともせず文句や批判やイヤミばかり言ってるんです。
なんだこの女は…と思ってたら、息子クリスの友人のケヴィンとその母親には妙に親切だったりする。外面がいいという感じでもなく、仏頂面なんだけど気遣いをみせて手助けするんですよ。
いや実は優しいのかも…と思ってたら、夫ヘンリーからもらったバレンタインカードはゴミ箱にぽいっするし、夕食時にクリスをボロカスにけなす。
たしかに身内に必要以上に厳しい人っているかもな。
本当はヘンリーにもクリスにも優しくしたいけど恥ずかしくてできないのかな?
そうか、不器用な人なんだ、と好意的にとらえようとしていたら教師のオリーヴは自分が勤めている中学校の校長に恋心を抱いているのが判明。校長には、はにかんだ笑顔すら見せるオリーヴ。
…ただ自分勝手なだけかよ!夫にも息子にも不満で、よそに癒やしを求めてるだけかよ!
オリーヴの言動にぶんぶん感情をふり回されてしまっているわたし。それでも何故か憎めないのがなんとも不思議です。
夫ヘンリーの気弱さがオリーヴの激しさを煽っている
ヘンリーはオリーヴと対象的な性格で、おとなしく控えめにみえる。そして優しい人にもみえる。
奥歯に物がはさまったような言い方になってしまうのは、個人的にこのオッサンがオリーヴを苛立たせて、よりいっそう事態をこじらせてるような印象があるから。
バレンタインにチョコレートとカードをプレゼントした時も、オリーヴがそっけない態度で受けとって皿洗いを続けている間、そばで”さぁ、褒めて、喜んで、感謝してくれよ”という期待の面持ちで立っているヘンリー。なんだかウザイ。
そして、自分の店で働いている若い女の子デニースに、淡い恋心を抱いてるっぽいところも気持ち悪い。
いちばん問題なのは、クリスがオリーヴにけちょんけちょんに言われているのを黙ってみていたことですね。
「自分の息子になんて言い方をするんだ!」ぐらいは言えるでしょう、本当に優しい人なら。父親としていかがなもんかと思います。
可哀想すぎるオリーヴの息子クリス
右側がクリス 1度目の結婚の時
いつも不機嫌で、自分にキツイことばかり言う母親と、気弱にそれをみているだけの父親のもとで成長したクリス。オリーヴが、心を寄せていた校長が交通事故で死んだ時に寝室で号泣しているのを父親と見るハメになったクリス。
クリスはどうみても1番の被害者ですね。オリーヴとヘンリー夫婦はお互いに不満を持ちながら勝手なことをやっていればいいかしれないが、息子はいい迷惑です。残念ながら親は選べませんからね…。
1度目の結婚の時、結婚式でクリスの花嫁の家族と一戦を交えるオリーヴ。
そのうえクリスと嫁の寝室に勝手に入って、ベッドに横たわり休憩する。その時に廊下で嫁が自分の悪口を他の親戚に言っているのを聞いてしまいます。
そこでオリーヴが取った行動には爆笑してしまいました😁
それが原因という訳でもないでしょうが、すぐに離婚したのもホントお気の毒でした。
舞台のアメリカ、メイン州の片田舎の美しい風景がいい
全体的に陰気なトーンでストーリーは進みますが、映像がとても美しいです。
オリーヴたちが住んでいる町は、海のすぐそばで森も近くにある風光明媚なところ。そんなに裕福ではなさそうですが、家は立派だし庭も広々としています。
そのうえ息子のクリスのための土地も確保しているということをヘンリーがドラマの前半で話しているんです。結局クリスは故郷を出てニューヨークに行ってしまいましたが。
ヘンリーが営む薬局がある、カフェなどの商店が並ぶ通りも古き良きアメリカって感じで悪くない。薬局も懐かしのアメリカンファーマシー(といっても今でもあるかもしれないけど)で、キャンディーとか誕生日カード、文具、ちょっとした小物もおいてある。
こういうお店って独特の甘い香りがするんですよね。
それとアメリカ人の典型的な家庭料理がでてくるのも、個人的には嬉しかったです。
ドラマの前半ではオリーヴ、ヘンリー、クリスが食卓で夕食を囲んでいるシーンが何回もあるんですよ。
あんまり美味しそうじゃない、冷めきったかんじのミートローフとかシチュー、グリーンピースなどをみんな不味そうに食べている。
味気ない大皿にのった料理を各自で取って食べる、ザ・アメリカンな食事風景が楽しめました。ケチャップの瓶がドンと置かれているのもオツです。味付けは塩、こしょう、ケチャップの3種でしょう。
お見合いで結婚した昭和のカップルのような人生観がみれた
一般的なアメリカ人って結婚してからもお互いに恋愛感情を持てなくなると、すぐ離婚するイメージがあります。
近年は日本でも離婚する夫婦は増えてきていますが、それでもアメリカの離婚率には及びません。
そういえば、わたしの祖父母世代(昭和はじめ)なんて、離婚したら世間に顔向けができない…という意味不明なことを信じていたりしますからね。
オリーヴとヘンリー夫婦は、まるでそういった日本の昭和カップルっぽいんですよ。お互い不満を持ちながら、ぐっとガマンして夫婦を続けていくところが。
アメリカ人カップルとしてあるまじき会話もありました。
オリーブが自分を好きではないことを何となく知りながらも
「俺を捨てないよな?」と聞くヘンリー
「気持ち悪いわね、なんなのよ」と返すオリーブ
アメリカでは夫婦は毎日
「ハニー、今日もキレイだよ」
「アイ・ラブ・ユー、ダーリン💖」
みたいなやり取りするんじゃなかったんですか…
2人がトイレを借りるために寄った病院で、強盗に合いそこで銃を突きつけられ「死ぬか、生きるか」の緊迫した瞬間がありました。その時に、もう死ぬかもしれないからか、突然オリーヴがヘンリーに激怒して
「あんたひと回り以上若いデニースに色目使ってたでしょ、知ってたわよ。本当はあんたとは別れるはずだった。彼(校長)が死んでなかったら…」と激白。
ヘンリーは
「はっ、あいつなんかと2週間も続かなかったはず。アル中野郎なのに!」と言い返し、超本音トークが繰り広げられました。
強盗が取り押さえられて、無事に家へ戻ってから
「まぁ興奮してつい言ってしまったことだからね…」と不安そうにオリーヴ語りかけるヘンリー。
あんな罵り合いをしてもなお、オリーヴと別れたくないのか、と驚きました。オリーヴも「わかってるわよ」という表情で、いつものようにヘンリーと同じベッドに入ります。
最後に孤独になってしまったオリーヴを自業自得と責められない
ヘンリーは倒れて4年も入院した後、亡くなります。オリーヴはニューヨークに住むクリスを訪ねたのに、楽しく過ごせず大喧嘩になって決裂してしまいます。
クリスの大逆襲です。
「ひどい母親だ、いつも僕をこきおろす。僕を破滅させておいてしらんぷりだ」とクリスに言われて泣き出すオリーブ。
オリーヴの気性の激しさから、逆上して怒り出すのかと思えば泣き出したのにはビックリです。意図的に子供を傷つけたことなんかない!と言いながら悲しげな顔で涙を流すんですよ。
いや、意図的じゃないにしても傷つけまくってたろ、いい大人が子供を💢
クリスに憎まれても文句はいえない立場なんでは?とも思うんですが、でも何だろう…オリーヴを決定的には嫌いになれなくて。
ヘンリーが倒れて入院していた間はかいがいしくお世話していたし、死に際には感謝の言葉も言ってました。まぁ、ヘンリーが意識のない状態だから言えたんでしょうけどね。普通にコミュニケーションが取れる状態ではけっして優しいことは言えない、というのがオリーヴの最大の問題かもしれません。
とはいえ妻でも母親でも人間。完璧ではない。オリーヴは、すでに自分が「無意識に」夫や息子にした仕打ちの罰をうけている。年老いてから田舎の大きな家でひとりになって。
明るい要素があまりなかったのに、楽しめた理由
オリーヴもヘンリーも欠点だらけ。でもそれぞれ重要なところでは支えあい、一生懸命に夫婦関係を続けた。
クリスは両親のせいで苦しみ、結婚も一度は失敗。それでも再婚して、子供を授かり、何とか辛い過去と決別しようと頑張っている。
人間ができていて、バラ色の人生を歩んでいる家族の話なんかより、リアルに心にせまるものがありました。
家族の関係なんて多かれ少なかれ、みんな悩んでいますよね。
わたし自身、オリーヴやヘンリーを上から目線で批判できるほど素晴らしい人間じゃない。オリーヴのように知らない間に家族を傷つけたり、ヘンリーのようにデリカシーのない行動をしているかもしれない。
…などと、しおらしく考えさせてくれると同時に
「いや、わたしはオリーヴほどひどくないな(^_^;)」と励まされもする(?)ところがよかったのではないかと推測します。