この本、2014年に日本で翻訳出版されてその後ベストセラーとなったので知っている人も多いかもしれません。
現在では「フランス人は10着しか服を持たない2」「フランス人は10着しか服を持たない ファイナル・レッスン」と続編がでていてすべて文庫化されており、コミック・バージョンもあるようです。ずいぶん売れているんですね。
ちなみにアマゾンレビューでは続編はあまり評判良くないようです。
今さらレビューするのはどうなんだと思わないでもないですが、コロナ自粛中に久しぶりに再読して
こ、これは…!
と衝撃を受けた部分が多かったため、ツッコミどころをメインに語っていきます。
わたしは小さい頃から活字中毒で、30代半ばぐらいまでは日常的に大量の本を読んでいました。その90%ぐらいが小説です。ノンフィクションやエッセイなどは、たまにしか読みません。
エッセイとノウハウを混ぜた感じの内容になっているこの本をなぜ手にとったかというと私が「フランス大好き女」だからです。
ってフランスに行ったこともないんですがね。(^_^;)
15歳から19歳ぐらいまで同い年のフランス人と文通し、お気に入りのフランス映画をビデオテープがすり切れるくらい繰り返し見ていました。
それなのにアメリカの大学に留学してしまい、文通していた女の子との連絡も取らなくなり、日本に帰国後はフランス映画を見るような機会もほぼありませんでした。
そんなある日(たぶん2014年の秋)ふと「フランス人は10着しか服を持たない」というタイトルのこの本が書店で目に入って買ってしまったというわけです。
アメリカ人の著者がホームステイしていた家庭はなんと「パリの貴族」
マダム・シック(シックな奥様?)、ムッシュー・シック、そして息子さんという3人家族の素敵なアパルトマンでホームステイ生活を送った著者は、その経験をベースにフランス人の ”質の高い”暮らしについてアメリカでの生活と比較しながらウンチクを語る。
この一家はパリに住んでいる貴族の末裔だという。
って…貴族かよ!
夕食後にパイプをくゆらせながら音楽を聞いているムッシュー・シック、ワイングラスを手に窓辺にたたずむ息子、そしてエプロンをはずしながら微笑むマダム・シック。
こういった描写に続いてこの一家がうちでくつろぐ時もスエットやジーンズは決して身に着けないとか、食事を大切にしていてマダム・シックが毎晩用意するフルコースを楽しんでる様子などが紹介される。食後のデザートは高級フルーツを使ったタルトなどで、これも手作り。
一般的なフランス人家庭の生活とはいえまい。
こんな生活スタイルをまねしろってかー!(誰もいってないけど)
たぶん最初に読んだ時はちゃんと目を通してなかったんだろう。タイトルの「10着しか服をもたない」にインパクトがあったので、「第4章 10着のワードローブで身軽になる」だけじっくり読んだのかもしれないですね。
著者は典型的アメリカンな生活スタイルに不満
第1章の「間食はシックじゃない」第3章の「面倒がらずに体を動かす」などを読んでいるとこの本の著者はアメリカ人のライフスタイルをあまり快く思っていないことがわかります。
間食はともかく、アメリカ人が毎日パン屋や食料品店に歩いて買い物に…ってのは無理があるでしょう。そもそもアメリカってのは車を持っているのが前提の社会ですよ。ニューヨークのマンハッタンぐらいの都会なら可能かもしれませんが。
普段は車で移動して、運動不足はジムっていうスタイルは国土が広すぎるアメリカでは仕方のないこと。これ、むしろ日本人にだったらピッタリのアドバイスになりますね。
日本は車がなくても生活できる地域が多く、基本的に街もこじんまりと小回りのきくつくりになってますから。
これは何だ! 第11章「ミステリアスな雰囲気を漂わせる」
まず1章を費やしてミステリアスな雰囲気をどうだすかってことを語ってるのがすごい。
紹介されているエピソードはなんだかなという感じ。↓
ホームステイ先の中庭をはさんだ向こう側のアパルトマンに住んでいたミステリアスな男性と窓越しにしょっちゅうほほえみ合っていた。彼は割とわたしに気があるみたいだった。そして人間はミステリアスな雰囲気のほうが魅力的だと気づいたのだ…(要約)
彼女によれば、ミステリアスを演出するにはどうすればいいか気をつけるべきことはひとつだけ。
自分のことをベラベラ喋らない
長々と書かれていたけれど、シンプルにいうと私生活のことを他人に話すのは控えて沈黙を楽しもうというのが結論でした。
ミステリアスな雰囲気を漂わせる=寡黙になる
説得力、ありますかー?
たしかにアメリカ人は基本的にオープンで聞いてもないのに自分のことを色々話してくる印象はありますね。
「最近離婚したばっかりで」
「わたしはゲイなの」
「クレカでの買い物料金払えなくて訴えられてるんだよね」
とか初対面でいきなり打ち明けられても…みたいな内容だったりします。日本人からしたらこのオープンさが逆にミステリー。
日本人、というかアメリカ人以外の人達にしてみたらおそらく
「…は?ふつう知らない人に自分のこと色々打ちあけたりしないよ」という感じではないでしょうか。
でも一般的なアメリカ人にしてみたら、沈黙を楽しむとか自分のことをしゃべらないようにするっていうことが難しいんだろうなぁ。
この本の原題は「マダム・シックのレッスン Lessons from Madame Chic」です。日本語に翻訳された本のタイトルで使用されている「フランス人は10着しか服を持たない」、というのはこの本の中の第4章で語られている内容になります。
貴族の末裔一家のみなさん、それぞれ季節ごとに10着ずつぐらいしか服を持っていなくて同じ服を繰り返し着ていたらしい。
さらにいくつかのフランス映画をあげて、「フランス映画の登場人物は同じような服を着回している」と主張しています。
これは強く同意ですね。
アメリカでは同じ服を1週間に2回着ることはちょっと恥ずかしいし、ましてや3回なんてとんでもないと思っている。でもフランスでは、そんなのは当たり前のことだった。だって、みんなそうだから!
ジェニファー・L・スコット著「フランス人は10着しか服を持たない」P60より引用
フランスに住んだ経験はなくともフランス映画好きなら深くうなずけるはず。わたしは特にソフィー・マルソー主演の「スチューデント」という映画が好きでDVDを繰り返しみてます。映画の中で3ヶ月ぐらい経過してるけど、ホントウに同じスカート、セーター、ブルゾン、をずっと着回している。
もしかしたらファッション雑誌のパリジェンヌ特集なんかでもライターが書いているかもしれないですね。質の良い、ベーシックなものを組み合わせて着回すのが本当のおしゃれだ、というように。
アメリカに留学していた時の経験から、ぶっちゃけアメリカ人はいつもTシャツにジーンズとか同じような格好してるのかと思っていたので、著者の「アメリカ流の大量のワードローブ」という表現にビックリしました。アメリカ人がそんなにたくさん服を持っていてとっかえひっかえ着てるとは知りませんでした。
日本に帰国してわたしがまず気づいたのが「日本の女性はとてもオシャレに気を使っている」ということ。髪はキレイにカラーリングしてメイクもばっちり、服もワンピースやチュニックを素敵に着こなしている。おそらく日本人女性の大半は1週間に2回、3回と同じ服を着ることに抵抗があるのかなと思います。
だからこそ、この本の邦題タイトルが「フランス人は10着しか服を持たない」という日本人女性に強くアピールするものに設定されたんでしょうね。さすが出版社の大和書房(の中の人)さん、わかってらっしゃる。
ファッションにうとく、服にお金をかけない主義のわたしでも当時フルタイムで勤務していた職場にに同じ服を週2回着て行くことはなかったです。この章を読んで
「そうだ、映画のスチューデントでヴァランティーヌ(主人公)も同じような服ばかり着てたな!」
と思い出して以降は制服のようにお気に入りの服を週に2-3回ぐらい着ていくことに抵抗がなくなりましたね。
いや、まぁ少しは影響をうけてます。でもホントウにこの部分だけです、参考になったのは(笑)
個人的には第4章だけでよかった、と思います。もしかするとわたしが人に生き方を指南されるのが嫌いな性格だからかもしれません。
メイクのしかただの、良いものだけを身につけろだの、教養を身につけろだの、情熱を持って生きろだの「あーせい、こーせい、」のオンパレードのこの本。
もしこの本のタイトルが
「パリのホームステイで学んだジェニファーが教える生活様式」とかだったら手に取らなかったことでしょう。
ということでタイトルは重要、ということが1番の学びでした!