自慢ではないが正社員で働いたことはない。
アメリカの大学を卒業して帰国後はずっと派遣か契約社員という身分で仕事をして来た。
この道20年のベテラン、就職氷河期世代である。
文系で英語スキルしかないため「英語を使用する仕事」の分野で就業することがほとんどだが、全く英語を使わないテクニカルサポート、カスタマーサポート部門で働いた期間もある。
今回は派遣先で仕事がなく、暇を持て余すハメになった体験をお伝えしたい、というか是非とも聞いていただきたい。
ちなみに別々の派遣会社から就業した3つの会社で同じような経験をしている。全てそれなりに名の通った日本企業だ。それぞれ「翻訳を含む英文事務」「英文テクニカルライティング」「仕様書の翻訳と校正」というのが仕事内容。
まずは就業するに至った流れから。
派遣で働いたことがある人なら知ってると思うが、まず登録している派遣会社が自分にあった仕事案件を紹介してくれる。もしくは自分から条件に合う仕事にエントリーする場合もある。
その時に派遣会社のコーディネーターさんから仕事内容や必要スキルなどの説明がある。
私が就業した時も同じ流れで、仕事内容を説明されてから
「Masamiさんの英語力と経歴なら大丈夫です。問題なくお仕事いただけると思いますよ」
と太鼓判を押された。そして次のステップが「職場見学・顔合わせ」という名目で行われる派遣先企業での面談となる。
派遣会社のいう「職場見学・顔合わせ」は実際には派遣先企業の部署にいるもし就業できたあかつきには上司になる人たちとの面接である。
派遣で長く働いている人ならば暗黙の了解の事実だが、いちおう法律上は”派遣で面接は禁止”となっているため関係者は絶対に「面接」とは言わないだけ。
自分が派遣先で就業できるかどうかはこの「面接」にかかっているので、私が通常いちばん緊張する局面である。企業によっては圧迫面接のようなことをして来たり、通訳や翻訳のテストをしようとするところもある。
(実際は禁止されているはず。こういう事をしたければ派遣じゃなく直接雇用するべき!)
しかし、就業後に仕事がなくて社内ニート状態となった3社については「面接」はとても和やかな雰囲気で行われた。
経歴にツッこまれることもなく、詰問されることもなく、私のToeicスコアをみて
「ほぉ~、これはスゴイですねぇ」(実際にそこまで凄くないスコアです)
「いやぁ、こんな英語力の高い人に来ていただけると助かります」
などと褒めそやされて
「では、いつから来てもらえますか?」
とアッサリと就業できることになった。3社とも全く同じような感じで決まった。
問題はその後、派遣先で仕事をスタートしてからだ。
1社目の「翻訳を含む英文事務」での就業先での話
老舗メーカーの販売促進関連の部署だった。台湾の会社との取引をしていたため台湾人スタッフとのやりとりが頻繁に発生しているが部長さんが英語を全く使えないとのこと。それでメールや資料の翻訳をしてくれる人が必要だと聞かされていた。
ところが最初の週は参考資料を読んでおくように言われただけで終わり、2週目にようやくメールの翻訳を頼まれたが4、5行ぐらいしかないものを1日に1-2通ぐらい。15分もかからず終わってしまうという状態だった。
部署には私以外に派遣社員がおらず、皆さん正社員で毎日とても忙しそうであった。もし自分も正社員で入社したならば、周りの人達に
「何かする仕事はないですか」と聞いただろう。
しかし私は派遣社員という身分なので、まずは派遣会社の営業担当に相談した。
「毎日暇です。翻訳といっても数行のメール文を1日に1通とかで、他に仕事の指示もいただけないんですが…」と状況を説明すると、驚いた様子で
「ええっ、そうなんですか?すぐに会社に確認取りますね」と言ってくれた。
その翌日、部長に別室に呼ばれて謝罪される。
「申し訳ない。仕事量に波があって、メールのやり取りを頻繁にする時もあるんだけど今たまたま落ち着いていてね。なるべく仕事を振るようにするので少し様子を見てくれませんか。」
こう丁重に対応されたら「わかりました」と言うしかないですよね。
それから1週間、2週間、3週間と日々は過ぎ…状況は改善されたのか。
答えはノーだ。改善どころか酷くなっていったのだ。笑
読んで時間をつぶす資料もなし、メール翻訳の依頼なし、ほかの雑用もなし。
毎日毎日何もすることなく朝から晩まで自席に座り、コーヒーを飲みながらノートパソコンをぼーっと眺めていた。
友達にに話しても
「えー仕事しないで給料もらえるなんていいね!」
と羨ましがられることが多く、
「それは辛いね」と理解してくれる人は少なかった。
そのうち会社でネット検索をするようになった。
検索ワードは 「派遣 仕事ない」「派遣 暇」など 笑
そしたら同じような状況の派遣社員達の叫びがたくさん出てきて驚いた。
自分にとって初めての事だったのでレアなケースとして捉えていたが実は派遣先で暇を持て余している人は珍しくなかったのだ。
時間はたっぷりあったためネット上にある大量の「仕事がなく会社で置物状態になっている派遣社員」
についての記事を読むことができた。
わざわざ派遣社員を雇っておきながら仕事を与えず放置する目的は何か
就業時間にググってせっせと情報収集しつつ自分の状況と合わせて考え、推測できることは以下の3つである。
1.仕事の手は足りているが、派遣社員をキープすることによって部署の予算をとりあえず確保しておきたい
2.派遣社員の使い方がよくわかっていない。雇っては見たが重要な仕事を任せるのは正社員にしたい。かといって派遣社員にさせるような軽い仕事を探すのも大変でどうしていいかわからない
3.派遣社員が必要だと早合点して雇ったけれど実は必要ないとわかった。でも人員確保の許可をもらった手前、正直に必要なかったとは言えないからしばらく居てもらおう
私が経験した派遣先は3社ともブラックな企業ではなく、名前の通ったメーカーで社員さんもとても丁寧に派遣社員の私に接してくれた。
つまり経費に余裕のある超ホワイト企業だったということになる。
1社目の経験だけ説明したが、2社目、3社目もほぼ同じ状況だった。
大企業であり、社員からのハラスメントも全くなし。派遣社員だからといってぞんざいに扱われることもなかった。ただ仕事を与えてもらえないだけで。
結局1社目は2ヶ月で辞めさせてもらった。
「様子みてましたが全く私にさせる仕事がないみたいです。辞めていいですよね?」
と申し出たところ特にとがめられることもなかった。
2社目、3社目の時は
「またかよ…」と呆れつつもなんとか自分の不利益にならないよう有効に時間を使うよう工夫することができた。
2社目ではワードやエクセルなどマイクロソフトOfficeのソフトの学習に没頭し、3社目ではフランス語の勉強をした。
もちろん大っぴらに堂々と勉強していた訳ではないが、仕事をしているふりをして自分のやりたいことを黙々とすることは可能だった。
フランス語学習は女性名詞、男性名詞のところで
「何だこれは~わからんわ!」となり挫折したが。。。
結局いずれの派遣先も2~3ヶ月ぐらいしか我慢できなかったのだが、計画的に何か実用的なスキルを獲得できるように1年ぐらい契約更新しても良かったかなぁと今になって思う。3社目で私がしたフランス語は完全に趣味でやりたかったことなので、例えばプログラミングやWebの勉強なんてできれば理想的だったかもしれない。
というわけで、派遣あるある「会社で何もすることがない」体験談でした。何もすることがなくても自分の好きなことが出来るなら悪くはないかと。
もし会社から「仕事以外のことするな!」とお達しがあれば
「する仕事も与えずに何なの、じゃ辞めますねー」でOK
派遣社員もこちらが自由な身分を楽しめたら勝ちですよ。